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 常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり) 
 妊娠期間中に正常の位置にある胎盤が胎児が産まれる前に子宮から剥がれてしまう状態をいいます。胎盤が子宮から剥れてしまうことにより胎児は十分な酸素を胎盤から得られず低酸素状態になって生命の危険にさらされ、さらに母体は剥がれた胎盤などの組織因子がが血液中へ流入してDIC注)を起こし非常に危険な状態におちいることがあります。 
 DIC : 播種性血管内凝固(はしゅせいけっかんない ぎょうこ) 
   
本来は体内の出血箇所だけで血液凝固反応が起こるべきなのに、全身の血管内で無秩序に血液凝固反応が起こって血栓(血液の塊が血管を塞いでしまう)を生じる状態です。あらゆる臓器内で血栓が多数発生すると、体中の凝固因子(血液を固める物質)をすべて使い果たしてしまい、最終的に血液が固まらなくなってしまいます。

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原因 いろいろな原因があります。
★外力による
 1)交通事故や打撲など妊娠中お腹を強打して胎盤と子宮の間に出血が起こり胎盤がはがれる。
 2)突然破水して、子宮の中が陰圧になりはがれる。

★感染などによる
 1)絨毛膜羊膜炎
 2)前期破水
 3)切迫流産早産(絨毛膜下血腫)

★高血圧による
 1)妊娠高血圧症候群
 2)慢性高血圧症
 3)慢性腎臓病
 4)HELLP症候群

★子宮や胎児の異常
 1)子宮筋腫
 2)子宮奇形
 3)子宮内胎児発育遅延、胎児奇形、
 4)臍帯が短い、臍帯の付着位置異常

★母体の状態(素因)による
 1)高齢
 2)多産
 3)喫煙、コカインなどの薬物使用、低栄養状態
 4)抗リン脂質抗体症候群
 5)以前の妊娠中に胎盤早期剥離を起こしたことがある
 
   
症状 初発症状は、腹部が硬く張った感じ、腹痛や腰痛、子宮収縮、性器出血など切迫流産や早産と同じような症状のことがあり、診断が付きにくいことがあります。
★疼痛・子宮収縮
痛みは弱い下腹部痛や子宮の張った感じ(子宮収縮)〜突然激痛で始まるなどさまざまですが、時間が経つと胎盤がはがれた部分に一致した圧痛(軽く押すと痛い)や子宮が持続的に収縮したままになって軟らかくならなくなります。ここで注意していただきたいことは、胎盤が子宮の背中側についているときには、腹痛の代わりに腰痛になります。

★性器出血(不正出血)
必ずしもあるとは限りません。少量で血の色というよりも「赤黒くサラサラして固まらない」出血です。

★胎動が減る
今まで感じていた赤ちゃんの動きが減ります。
 
   
診断 ★外診と内診
初期には少量の出血(赤黒い)や軽度の子宮収縮ですが、症状が進行すると胎盤のはがれた部分に圧痛(押すと痛い)が生じ子宮の収縮は持続的で常に硬くなり子宮が大きくなります(子宮底が上昇)。

★超音波検査
 1)先ず胎児の状況判断を行います。胎児の心拍や胎児の元気度のチェックを行います。
 2)通常の切迫早産や前置胎盤などの出血ではないか?鑑別診断を行います。
 3)子宮からの胎盤の剥がれ具合をチェックします。
   @極初期では超音波検査では診断が付かないこともあります。
   A初期の変化では、胎盤の辺縁や厚みの変化(5.5cm以上の厚み)が認められます。
   B比較的重症例になると、子宮と胎盤の間や胎盤の中に血腫(内出血像)を認めます。

★血液検査
初期では血液検査上変化を認めないことが多いようですが、妊娠高血圧症候群、HELLP症候群、子宮内感染症などがあるときには以前の検査結果と合わせ早期発見が可能な場合もあります。特に症状が進行すると血液凝固系に変化が現れます。

★胎児の状態のチェック
分娩監視装置を用いて胎児の状況判断を行います。子宮収縮曲線は不規則な子宮収縮や持続的な収縮さらに過強陣痛などが出現します。胎児心拍では低酸素状態を反映した胎児機能不全状態を表します。
 
 

★常位胎盤早期剥離の重症度分類
                          
Pageの分類という重症度分類

重症度  症状   剥離面積  頻度
 軽症  0度   臨床的には無症状で分娩後に剥離を確認する  30%以下   8%
1度  性器出血は500ml以下子宮収縮あり、胎児の心音は場合によっては不明
 蛋白尿はまれ
 14%
 中等症 2度  性器出血は500ml以上、下腹部痛あり子宮は硬直、胎児は診断時には死亡している 事が多い、蛋白尿は時々出現  30〜50%  59%
 重症  3度  子宮内出血と性器出血は多い、子宮の硬直は著明、下腹部痛、子宮の増大胎児は死亡、出血性ショック状態、DICの出現、蛋白尿あり、子宮の表面まで出血を認める,  50〜100%  19%
   
治療と管理 当然ですが、早期発見と早期治療が求められます。治療の基本は原因である胎盤の早期娩出(胎盤を取り除くこと)です。
分娩進行状態がよく軽症であれば経腟分娩も可能な場合もありますが、原則としては胎児の生死にかかわらず帝王切開術が選択されます。
★手術前の管理
母体の全身状態の管理が中心になります。大量出血に備えて輸血の準備や出血性ショックに対する治療を行うなど、DICに対する治療を最優先にします。また胎児の生存を確認できたときなどは、一時的に子宮の収縮を抑える薬の投与も行います。

★手術中の管理
緊急手術のため麻酔は全身麻酔が選択される場合が多いです。通常通り胎児と胎盤を娩出しますが、その後に弛緩出血を起こす可能性があるために通常よりも多く子宮収縮剤を使う場合があります。さらに子宮からの出血が止まりにくい場合は止血のために子宮動脈や内腸骨動脈を結紮(血管をしばって出血を止める)をすることもあります。それでも子宮や胎盤の剥離部分からの出血が続く場合は子宮摘出術を行うこともあります。

★手術後の管理
手術後も子宮収縮剤の投与とDICに対する治療を続行します。またDICなどが原因で多臓器不全、術後の手術創からの出血による血腫、感染症、肺水腫、sheehan症候群などの予防と早期発見治療を行います。
 
   
次回妊娠時の注意点 次回の妊娠でも胎盤早期剥離を起こす可能性は高くハイリスク妊娠として扱います。また妊娠高血圧症候群、慢性高血圧、腎臓疾患などの既往のある方は発症率がさらに高くなります。また今回の治療後に再度妊娠された場合、細菌性腟炎などの感染症も早期剥離の原因になりうるため厳重に予防や治療を行う必要があります。 
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