切迫早産 |
産婦人科学会では「妊娠22週から妊娠36週までの分娩を早産と定義する。またこの時期に子宮収縮や頚管開大が認められ、早産の危険性が高い時切迫早産と定義する。」と定義されています。
早産は全妊娠中の3〜5%に発生するといわれ、妊娠28週以前の早産児は、未熟なために周産期死亡率が高く、救命してもいろいろな後遺症や合併症が発生する可能性があります。切迫早産を治療する上でのもっとも大切なことは、初期段階で発見して、その原因を治療して1日でも長く妊娠期間を延長して胎児の発育や成熟をはかることです。 |
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原因 |
切迫早産の原因は、さまざまな因子がいくつも重なって起こることが多く、特定することは困難です。直接原因として頻度の高いものは、前期破水、絨毛膜下血腫、子宮筋腫の合併、双胎や多胎妊娠、子宮の奇形、子宮頚管の短縮(頚管無力症)、羊水過多症などが上げられます。中でも前期破水が最も頻度が高くその原因として子宮頚管炎、絨毛膜羊膜炎の存在が重要視されています。 |
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症状 |
頻回の子宮収縮、下腹痛、性器出血、おりものの増加、などが一般的な症状です。しかし最近は日中仕事をされている女性が多いため、日中の軽度の子宮収縮に気付かず受診時に症状が進行している場合も有ります。もしも夜間などに頻回に子宮収縮を感じるようなときには、早めに受診検査をお勧めします。また、子宮頚管無力症などでは、出血や下腹痛を伴わず突然子宮口が開大してしまうこともあります |
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検査と診断 |
切迫早産の一定の診断基準は定められていません。以下のような検査を行い異常を認めた場合には一般的に入院治療を行うことが必要とされています。
@外測陣痛計
子宮収縮の状態を、外測陣痛計を用いて客観的に評価して診断します。10分以内に1回以上の規則的な子宮収縮、もしくは不規則であっても自覚できる収縮や痛みを伴う収縮は治療の対象になります。
A超音波診断装置
性器出血の原因および出血部位の診断、頚管無力症の診断などをします。性器出血は、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、頚管ポリープなどでも起こります。特に常位胎盤早期剥離は子宮収縮を伴い母児供に危険な状態になるために鑑別診断が重要です。頚管無力症の診断は、内診で子宮口の軟化を確認後、超音波診断装置によって頚管の長さを測定し診断します。一般的に頚管長は、3.5cm〜4cm以上が正常ですが、3.0cm以下の場合には治療の対象となります。
Bその他
頚管分泌液培養検査 |
細菌性腟炎、絨毛膜羊膜炎の起炎菌を調べます |
胎児性フィブロネクチン |
胎児由来の物質で通常腟や頚管内には存在しない。
陽性のときは,卵膜などの損傷や前期破水を考える。 |
顆粒球エラスターゼ |
頚管の炎症反応を鋭敏に反映します。 |
インターロイキン-6,-8 |
切迫早産や前期破水で高値を示します。 |
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進行度の評価 |
tocolysis indexという早産進行度の評価を行い予後の判定を行います。合計点数が5点以上になると長期間の妊娠継続は望めないとされています。
点数
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0
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1
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2
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3
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4
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子宮収縮
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なし
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不規則
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規則的
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―
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―
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破水
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なし
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―
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高位破水
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―
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低位破水
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出血
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なし
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少量
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多量
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―
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―
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子宮口開大
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なし
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1cm
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2cm
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3cm
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4cm以上
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治療と管理 |
治療の原則は入院管理して可能な限り妊娠期間の延長をはかることです。そのために子宮収縮、胎児の状態、感染徴候などを総合的に評価する必要があります。
子宮収縮に対して、子宮収縮抑制剤(塩酸リトドリン:ウテメリン、硫酸マグネシウム)
感染徴候に対して、起炎菌を同定し有効な抗生物質を使用 |
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注意点 |
切迫早産は、妊婦検診だけでは100%発見できません。お母様が日ごろから注意深く子宮の状態を感じ取っていただくことが1番の早期発見方法です。特に初産のお母様は、「あっ!!赤ちゃんが動いた!!」・・胎動を始めて感じた喜びは何物にも変えがたいものだと思います。しかしそれが・・・赤ちゃんが子宮収縮で苦しくもがいているとしたら・・・。そこで、普段からお母様自身の右手を優しく下腹部に当てて赤ちゃんの動きと同時に子宮の固さを感じ取る習慣をつけてください。空気の抜けかけたビーチボールほどの軟らかさであれば問題ありません。パンパンに空気が入っているビーチボール以上に硬くなっているときは、子宮が収縮しているとお考えください。まずはあせらず、安静にして様子を見ましょう。何回も繰り返すときには何分おきに硬くなるかを計ってください。だんだんと間隔が長くなり張りが感じなくなれば心配ありません。張りが1時間以上続くときには早めに主治医にご相談ください。
どちらにせよ、1日に何度も張りを感じるようになったら早めに主治医にご相談いただきことが、切迫早産の早期発見につながるものだと思います。 |