妊娠初期の腹痛 |
妊娠初期の腹痛は、妊娠特有の生理的な腹痛と妊娠に関係のない他の疾患による腹痛があります。また妊娠中はレントゲンやCT検査などが制限され、さらに妊娠中特有の血液検査の結果や臓器の位置の変化があるために非妊娠時に比べて診断が難しくなることがあります。 |
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妊娠初期によく
ある腹痛 |
妊娠が成立すると、非妊娠時に比べて子宮に流れ込む血液量が格段に増加します。この増加した血液は骨盤の静脈を経由して心臓に戻るため骨盤内の静脈が非妊娠時よりも膨らむために腰痛や下腹部の痛みとして感じることがあります。
また子宮を支えている靭帯(じんたい)は大きくなる子宮に引っ張られて足の付け根あたりがつれるような痛みを感じることもあります。
これらは妊娠による生理的な痛みと考えられますが、初産婦さんや妊娠初期の経産婦さんなどは子宮収縮による痛みと区別しにくい場合もあります。痛みが増加するような場合は早めに主治医とご相談ください。 |
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妊娠が原因の
腹痛 |
1)円靭帯牽引痛
円靭帯(えんじんたい)とは子宮と骨盤をつないで子宮がグラグラと動かないように支えている組織のことです。妊娠すると子宮が大きくなるためにこの靭帯が子宮に引っ張られて、両側のそけい部(足の付け根)あたりにつれる感じや痛みを感じる場合がありますが、妊婦健診で異常を指摘されていなければとくに心配ありません。
2)腰痛
妊娠すると非妊時に比べ子宮へ送り込まれる血液量が増加し子宮周囲〜骨盤周囲の血管が膨らむために腰痛が起こることがあります。妊婦健診で異常を指摘されていなければとくに心配することはありません。
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3)切迫流産
妊娠初期の腹痛の原因で最も多く、下腹部の真中(陰毛の直ぐ上)あたりの鈍痛があります。出血はあっても少量です。このような痛みを感じた場合は、まず安静にして症状が治まるのを待ってください。もしも時間が経って腹痛や出血が悪化する場合は早めに主治医に相談してください。
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4)進行流産・不全流産
切迫流産に比べて出血量・腹痛ともに強く、時には陣痛のように痛くなることがあります。子宮内にある胎児や絨毛(胎盤)などは、徐々に子宮口から腟へ押し出されてきます。この状態になってしまうと妊娠を継続させることは不可能で、直ちに手術が必要になります。
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5)子宮外妊娠
本来の妊娠は子宮の内膜に受精卵が着床して胎児が発育しますが、受精卵が子宮以外の場所に(卵管など)着床して発育し妊娠の継続ができなくなった状態をいいます。突然の腹痛から始まることが多く、特に卵管妊娠や卵巣妊娠などでは、卵管や卵巣の破裂に伴う多量の腹腔内出血(お腹の中に出血する)がおこります。妊娠を継続させることは不可能で、直ちに手術が必要になります。
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婦人科系疾患による腹痛 |
1)子宮筋腫
結婚の高齢化に伴い子宮筋腫合併妊娠は増加傾向にあります。一般的に子宮筋腫は妊娠初期には大きくなり、妊娠後期には比較的に小さくなります。また子宮が大きくなるにしたがって筋腫へ流れる血液量が減少するため筋腫自体の変性が起こります。痛みは、筋腫による周囲への圧迫が起こると「鈍痛」が起こり、変性を起こした筋腫が圧迫されると「激痛」を起こすことがあります。
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2)卵巣腫瘍
「黄体のう胞」という妊娠が原因の卵巣のう腫や妊娠以前からある卵巣腫瘍(のう腫)などが、妊娠経過とともに大きくなる子宮によって圧迫され痛み(鈍痛)を生じる場合があります。また卵巣腫瘍(のう腫)の直径が5〜7cmになると突然ねじれて激痛を起こすことがあります(卵巣腫瘍茎捻転)。茎捻転を起こした場合は緊急手術の対象になります。
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消化器系の腹痛 |
1)便秘
妊娠するとホルモン環境が変わりさらに子宮が大きくなることで大腸を圧迫して便秘しやすくなり左下腹部痛を起こすことがあります。妊娠を継続させるプロジェステロンというホルモンの働きで大腸の運動性が低下し(弛緩性便秘)、さらに増大した子宮によって圧迫されるために排泄遅延が起こり大腸で通常以上に水分を吸収され過ぎて悪化すると考えられています(直腸性便秘)。むやみに浣腸などしないで、主治医と相談の上、緩下剤などを用いて治療してください。
2)下痢
下痢を伴った腹痛に対しては、悪化すると電解質(母体中の塩分など)バランスが崩れ脱水症を起こし、さらに子宮収縮を引き起こす可能性があります。ウイルス性腸炎、食中毒やその他の原因を調べたうえで、問題の無いものであれば整腸剤などでフォローアップします。
3)虫垂炎(盲腸炎)
吐き気、嘔吐、倦怠感などの症状から始まることが多く、続いて右下腹部痛が起こります。妊娠中は虫垂(盲腸)が大きくなった子宮によって通常の場所より右上方へ押し上げられていることが多く典型的な症状を示さないことがあります。また血液検査においても妊娠によって変化しているために診断困難なこともあります。診断が付けば症状に応じて内科的に抗生物質の投与をしたり、時には妊娠中であっても外科的に手術が必要になることもあります。 |
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その他 |
1)尿管結石・腎臓結石
腹痛ではじまることもありますが、腰背部痛が多く血尿をともなうことがあります。ときには激痛で発症することもあります。
2)尿路感染症(膀胱炎を含む)
妊娠中は、ホルモンの影響や子宮の増大などで非妊娠時に比べて膀胱炎や腎盂炎に罹りやすくなっています。残尿感や尿の異常を感じた場合は膀胱炎の可能性があり、、腰背部痛(背中を軽くたたくと痛みが増す)や発熱などがあるときは腎盂炎の可能性があります。いづれも早めに診察を受けてください。予防のためには尿意をあまり我慢せず頻回にトイレに行く習慣をつけてください。
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3)胆石
性別で見ると女性の方が無症状でも胆石所持の割合が多く、原因としても女性ホルモンのバランスが崩れることによって胆石が出来やすいとされ、さらに妊娠回数の多い女性は妊娠中に胆道が圧迫されて胆汁の流れが悪くなり妊娠によってホルモンに変化が起こるため胆石になりやすいと考えられています。主な症状は、みぞおちの痛みや右脇腹の痛み、背中の痛みや張り、腰痛、肩凝り、大量の汗、吐き気や嘔吐、胸部の疼痛を起こします。痛みは長時間続くことはなく一時的でその後も全く通常の状態になります。胆嚢や胆管が炎症を起こすと39度近い高熱を出すことがあり、胆管結石では胆管で肝臓から流れ込む胆汁が胆石によってせき止められてしまったために目や皮膚が黄色になる黄疸症状を引き起こすことがあり黄疸によって尿の色が濃くなることもあります。 |