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 卵巣腫瘍合併妊娠 
妊娠中に発見される卵巣腫瘍は普段あまり症状が無く、妊婦検診時に偶然発見される事が多いです。その殆どは妊娠を期に機能的に卵巣に水分が貯留した「ルテインのう胞」です。症状が無く妊娠以前から卵巣腫瘍が存在した場合も良性腫瘍が殆どですが、まれに悪性のこともあるため検査は必要です。しかし良性腫瘍でも、妊娠の経過と共に茎捻転、破裂、卵巣腫瘍による圧迫で流産・早産、分娩の妨げになったりします。 
   
ルテインのう胞 妊娠が確立すると、卵巣は黄体ホルモンという妊娠を継続させる為のホルモンを多量に分泌します。この時にホルモン分泌を担う部分に内出血が起こり、時間が経つに従い血液成分だけ吸収されて水分の貯留が起こります。これがルテインのう胞です。直径2〜3cmほどの物から10cm以上におよぶ物もありますが、だいたい5〜6cm程です。ふつう、妊娠14〜16週頃(胎児が自立し始める頃)になると自然に小さくなり消失します。ルテインのう胞が胎児の発育を妨げることは有りませんが、妊娠中に問題になるのは、のう胞の増大により茎捻転、破裂、のう胞増大による圧迫で流産などを起こす可能性がある事です。 
   
卵巣腫瘍 上記のルテインのう胞を除いて、妊娠以前から存在した卵巣腫瘍の頻度は、0.1〜0.2%と言われています。そのなかでの悪性腫瘍はさらに4〜5%(全妊娠中の頻度は0.005〜0.01%)です。発見時の大きさもさまざまで、直径2〜3cmの物から10〜15cm以上の物まであります。この卵巣腫瘍が胎児の発育を妨げることは有りませんが、妊娠中に問題になるのは、茎捻転、破裂、卵巣腫瘍による圧迫で流産・早産、分娩時の胎児下降の妨げ、などを起こす可能性のある事です。また妊娠が卵巣腫瘍自体に及ぼす影響はあまりありません。悪性の卵巣腫瘍の場合、妊娠によってその進行が早くなる事は無く、非妊娠時と変わらないと言われています。 
   
検査と診断 殆どが、妊婦検診中の超音波検査で発見されるため、のう胞の大きさや内容物の確認も同時にできます。内容物が一様に水様性で5〜6cm以下で妊娠14週ごろより縮小すればルテインのう胞です。
内容物が充実性(水様性以外)である時には、必要に応じてMRIなどでさらに詳しく調べることも有ります。悪性腫瘍を疑う時は、血液中の腫瘍マーカー(CA125、CA199、STN、IAP、AFP、SLXなど)を調べます。一部の腫瘍マーカーなどは妊娠の影響も考慮する必要が有ります。
 
 
左の卵巣に直径54.5mmの卵巣のう腫を確認しました。のう腫の内容物は液体のため写真上では黒く表現されています。
左の卵巣に卵巣腫瘍を確認しました。上の卵巣のう腫に比べて腫瘍部分は液体部分が少なく充実性腫瘍であるため比較的白く表現されています。

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治療と妊娠管理 ★ルテインのう胞
原則として、経過観察をします。茎捻転、破裂、のう胞増大による圧迫で流産などを起こす可能性のある時には、手術的に卵巣摘出やのう胞の縮小を行います。

★卵巣腫瘍
小さい腫瘍の時には経過観察しますが、妊娠中の卵巣腫瘍は上記のような状態に至りやすいために原則は、腫瘍部分だけの摘出手術(卵巣の健常な部分を残す)を行います。時期的には胎児に影響の少ない妊娠14週以降に行われています。(茎捻転などの突発的な状態ではその限りではありません)
また経過観察していた腫瘍や妊娠中期〜末期にかけて発見されたものが、分娩に障害をもたらす時には、帝王切開術を行い同時に摘出します。

★(卵巣腫瘍)茎捻転
卵巣は、子宮と骨盤に靱帯(じんたい)という組織でつながり正常の大きさ(親指大)で捻転することはまずありません。しかし上記のように大きくなった卵巣は、ボールが転がるように回転(捻転)しやすくなります。捻転の角度がわずかであれば自然に元に戻りますが、1回転(360度)以上回転してしまうと元に戻らなくなり、同時に卵管も一緒に巻き込んでいることも多く卵巣や卵管へ流れ込む血液は遮断されてしまいます。統計上では、直径10cm前後、右≧左(左側にはS状結腸があり回転を起こしにくい)などと言われています。茎捻転を起こした場合は、緊急手術になります。

★手術方法
開腹手術と腹腔鏡下手術があります。最近は腹腔鏡下手術≧開腹手術になりつつありますが、卵巣腫瘍が周囲へ癒着している場合などでは、手術視野を十分に確保できる開腹手術を行います。腹腔鏡下手術では、一般に腹腔内にCO2(二酸化炭素)を入れて膨らませて手術を行いますが、妊娠中は胎児や母体の心臓や血液循環を考慮して腹壁吊り上げ法(お腹の皮を機械的に持ち上げて手術視野を確保する)が選択されることが多いようです。開腹手術と腹腔鏡下手術どちらの手術方法も胎児への影響は未だに不明な点が多いようですが、異常児を出産したという報告は有りません。ただし手術の影響で術後に子宮収縮が起こることは免れず、子宮収縮抑制剤を併用します。さらに緊急手術と予定手術の妊娠に対する影響は切迫流産早産や破水の頻度に差が有るという報告と無いという報告が両者ありいまだに結論は出ていません。
 
   
悪性腫瘍の管理と治療 原則として、悪性腫瘍が疑われる場合には早期に手術を行います。術前の検査によって転移など進行状態の検査を行い、妊娠状況ともかね合わせたうえで手術時期を決定します。術前検査で転移なども認められず卵巣に限局している場合は、術中の迅速病理診断が重要な鍵となります。病理診断の結果で保存手術か根治手術か決定することもあります。分娩は胎児の成熟が確認された後に帝王切開術で行い、必要があれば同時に腫瘍摘出術後の追加手術や根治手術を行います。さらに分娩後化学療法を行います。
 悪性腫瘍の進行が考えられるような症例では、妊娠初期の場合は、母体を優先に考え人工妊娠中絶術も考慮して根治手術を行うこともあります。妊娠中期以降で、胎児が未熟な場合化学療法を先行して行い、胎児の発育を待って帝王切開術と根治手術を同時に行うこともあります。妊娠中期以降では、抗がん剤は胎児に対して重篤な障害はきたさないという報告も有りますが、長期的な影響については不明です。根治術後は化学療法を行います。妊娠によって卵巣がんの予後は左右されません。予後決定因子は、卵巣がんの進行状態、術式、術後療法だと考えられます。

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