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 妊娠中のお薬
「妊娠していますが、このお薬は安全ですか?」・・・外来で処方する際にしばしば妊婦さんに質問されますが、はっきり言って自信を持ってお答えする事は出来ないのが現状です。
医薬品添付文書には決まり文句のように・・・
「妊娠中の投与に関する安全性は確立されていないので、妊娠または妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合だけ投与する。」、「妊娠中の投与に関する安全性は確立されていないので、妊娠または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。」といった記載がされています。
いかにも、お役所的な文章で患者さんにお薬を処方するしないは、現場の医師の裁量によります。
さらに添付文書には、「〜投与しないこと。」から「〜投与しないことが望ましい。」というようにさらにあいまいなものもあります。
これらのお薬の中には、「胎児の催奇形を疑う症例報告がある。」ものから単に「妊娠中の投与に関する安全性の確立していない。」ものまでが含まれているのです。

医師が妊娠中または妊娠の可能性のある女性にお薬を処方投与するのは、治療上必要性が有るからであり、そのお薬が安全だから処方投与しているわけではないのです。
 
   
薬の影響を考える前にご理解いただきたい事 妊娠を考えるうえで是非ご理解頂きたいことがあります。
それは、我々人類もこの地球上に生命を受けた生物であり、生物の宿命である「自然淘汰」にはなすすべがないということです。
一説によると、受精卵の約70%近くに染色体異常が存在し着床までに至らないといわれています。またこの「自然淘汰」で臨床的に問題になるのが「自然流産」です。
実際、全妊娠の約15%程が妊娠初期に流産され、そのうちの65〜70%程に染色体異常が認められています。また初期流産の原因は染色体異常だけでなく現在の科学では診断の出来ない因子も考えられます。
おそらく、「自然流産」した胎児の90%以上の確立で、受精した時点で運命が決まっていたことになります。

人類の自然淘汰を発生学的に分類をすると・・・
@受精以前・・・・・・・・・・・・・・・精子や卵子の自然淘汰
A受精から着床まで・・・・・・・・この期間に起こる自然淘汰が全体の70%以上におよぶ
B初期の自然流産・・・・・・・・・全妊娠の15%におよぶ
C中期以降の胎児死亡・・・・・・染色体異常や発生学的な胎児奇形などによる
D出生直後の新生児死亡・・・・染色体異常や発生学的な胎児奇形などによる

以上の狭き関門を潜り抜けて無事出産された赤ちゃんの中にも、分娩直後に気付く奇形や成長とともに診断の付く異常も(心臓奇形や精神発達遅滞など)全出産の2〜3%存在します。
先天異常の赤ちゃんが産まれると、「妊娠中に飲んだ薬のためでないか?」や「妊娠中に無理をしたからではないか?」と考えがちですが、
原因のわからない異常が殆どだということをご理解下さい。 
   
妊娠経過による薬の影響について @男性が内服した薬の影響
 理論的には、薬剤の影響を受けた精子は受精能力を失うか、受精しても着床までにはおよばず妊娠が成立しないと考えられます。
たとえ薬物の影響があったとしても、精子形成には70〜80日間かかるので影響が考えられるのは、受精前3ヶ月前に投与された薬剤です。射精数日前に薬剤を内服しても、すでに完全な精子として蓄積されているものを射精するので影響は考えられません。
内服している薬剤がたとえ抗がん剤でも影響ないと考えられています。

A受精前から妊娠3週末〜4週前半までに内服した薬の影響
 理論的には、
受精前に薬剤の影響を受けた卵子は受精能力を失うか着床不全を起こし妊娠には至らないか早期流産を起こすと考えられます。
もしも出生に至り異常を起こしたとすれば、それは染色体異常か遺伝子レベルの異常と考えるべきでしょう。
 
妊娠3週末〜4週前半以内に影響を受けた場合には、all or noneの法則に従います。すなわち、着床不全または流産して胎児が消失してしまうか、完全に修復されて健康な赤ちゃんを出産するかです。

B妊娠4週から7週後半までに内服した薬の影響
 妊婦さんに対する薬の副作用を考える上で、1950年代後半に睡眠薬として発売されたサリドマイドという薬が全世界的に胎児の四肢短縮症などの奇形を多数発生させた事件が教訓となり、薬が胎児に悪影響をおよぼす時期がほぼ正確に明らかになりました。
サリドマイドを内服された妊婦さんで最終月経から
32日以前52日目以降に内服された方からは、奇形が発生しませんでした(月経周期28日とした場合です)。
しかし薬によって体内に長時間蓄積するものや、胎児の発育速度の個体差、月経周期の不順、などを考慮する必要があります。
 この時期は胎児の中枢神経、心臓、消化器、四肢を含む全身の形、などが細胞分裂を繰り返しながら作られていく時期で、催奇形性という意味ではもっとも重要な時期であると考えるべきでしょう。

C妊娠8週から15週末までに内服した薬の影響
 この時期になると、胎児は重要な器官の形成は殆ど終わり催奇形の危険性は日を追って低下していきます。しかし一部の薬によっては、性器の発育、口蓋の形成、などに影響をおよぼすこともあります。

D妊娠16週から分娩までに内服した薬の影響
 この時期は薬によって奇形のような異常は形成されなくなりますが、各臓器における機能的な発達に影響することがあります。また分娩近くに投与された薬によって新生児が異常をきたすこともあります。
 母体に投与された薬は胎盤を経由して胎児血液中に移行します。約半分は直接胎児血液循環に入り、残りは胎児の肝臓(まだ成人に比べれば未熟ですが・・・)で代謝されてから胎児血液循環に入ります。
薬の種類によって胎盤通過性に違いが有り、胎児に移行しやすい薬(殆どの薬が通過してしまいます・・・)、移行しにくい薬、移行しない薬、胎盤で代謝されてしまう薬などに分けられます。

E授乳期に内服した薬の影響
 授乳期の母親に投与された薬は、母乳で新生児に移行します。この時期で問題になるのは、薬物の代謝機能が未熟な生後1週間以内の新生児です。またそれ以降でも哺乳量が大量になれば母乳中の濃度が低くても注意が必要です。しかし妊娠中と決定的な違いは、新生児に異常を起こす可能性のある薬を母親が内服する際には、授乳を止めることが出来るという点です。

妊娠週数別胎児奇形の危険度は、こちらへ
 
   
薬剤による胎児への危険性 妊娠中に使用する薬で頻度の高いものとして、解熱鎮痛剤、総合感冒薬、便秘治療薬、健胃腸薬、抗生物質、鎮咳去痰剤などです。
これらの薬は非妊時にも一般的に投与されている薬剤が殆どです。日本国内には胎児に対する危険性を具体的に取りまとめた報告はあまりみられないので、アメリカ食品医薬品局(FDA)がまとめた報告書を利用している状況です。
 
   
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