「来月あたり、車で2〜3時間の温泉に行きたいんですが?」や「妊娠○ヶ月ごろ海外旅行に行きたいんですが、大丈夫でしょうか?」・・・ 妊婦健診をやっていると、しばしば質問されます。医師の常識と妊婦さんの安全策を考えれば、許可しない・・・。しかし本音は「この妊婦さんは毎日ハードな仕事をこなしているのだから、逆にのんびりと旅行して心身共に休めることも大切・・・?」
許可するか否かは本音と建前の問題になってしまいます。 |
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旅行の是非 |
スポーツと同様に旅行は本来、各自の自主性や自発性を重んじて行われるものであり、個人の趣味の域にあると考えています。ご旅行を計画されている妊婦さんは早めに医師に相談し、現在〜今後の妊娠経過を説明してもらいスケジュールを決めてはいかがでしょうか。 |
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私の個人的な考えですが・・・ |
しばしば「長距離の移動を必要とする旅行は避けるべきです。」などを眼にする事があります。 しかし、妊娠9ヶ月頃に帰省分娩のために長距離移動される方もいます。帰省分娩を認めて旅行を否定する根拠は有るのでしょうか?そもそも旅行は、日常の精神的肉体的なストレスを和らげることが目的のはず・・・?妊婦さんは、ストレスが溜まっているのです。妊娠経過が順調であれば、無理の無いスケジュールでご旅行に行かれてストレスを発散してください。 |
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旅行の条件 |
妊娠中の旅行に関するガイドラインは有りません。 私は、「マタニティスポーツ」のガイドラインを基準にして外来指導しています。 |
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私的追加事項として |
@ 旅行先での1日の運動量は、日常生活以下にする。 心身ともにリラックスすることに心掛けていただく。ハードな計画をたてない。
A 温泉などでは、長時間湯船に入らない。妊娠中は、血液循環が非妊時と異なるために、末梢血管が拡張して脳貧血などを起こしやすくなります。
B 車・電車・飛行機などに長時間乗るときには、非妊時よりも血栓症などになり易い(旅行血栓症・エコノミー症候群) 血栓は太ももの深部静脈に出来易く、長時間同じ姿勢で座り続けると、この部分の血管が圧迫されて血栓が形成されます。この血栓の一部または全体が剥れ血流に流されて肺動脈に詰まって肺塞栓症をひき起こします。予防策として、水分の補給、1時間に1度くらいは席を立ち軽く身体を動かす。長時間足を組まない。
C 妊娠9ヶ月以降は、長期・長距離の旅行は避ける。 旅行先で異常な症状が有った場合でも、掛かり付けの医師に早めに診察してもらえる範囲内にとどめる。
D 常識的な範囲内の旅行が原因で流産する事は無いと思われます。医学的な原因で流産してしまう運命にあった胎児が、旅行が引き金となって症状が早めに出ることは有ります。
海外旅行保険では、妊娠に関する病的諸症状をカバーしていないものがあります。ご注意ください。 |