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卵巣がん 
近年、高齢出産傾向にともなって妊娠初期の経腟超音波検査で卵巣腫瘍を発見する機会が増えてきました。発見した卵巣腫瘍の扱いに関して、

@腫瘍は良性か悪性か?
A手術適応はあるか?
B手術時期は?
などが問題になります。妊娠に卵巣がんが合併する頻度は15000〜50000人に1人程度だといわれています。
 
   
症状 妊娠に卵巣腫瘍を合併してもほとんどの場合無症状ですが、腫瘍の大きさや場所によって下腹部の張る感じや下腹部痛、時には排尿困難、排便困難などがあります。さらに卵巣腫瘍が妊娠子宮の圧迫などによりねじれてしまうと卵巣茎捻転(らんそうけいねんてん)をおこしたり分娩が原因で破裂すると激痛をおこし緊急手術の対象になります。

良性卵巣腫瘍は・・→ こちらへ
 
   
診断

妊娠初期の超音波検査で卵巣腫瘍が発見された場合、精密検査を行います。血液検査で腫瘍マーカーさらにCTスチャンやMRI検査を行います。妊娠初期〜中期にかけてはCTスチャンは胎児への放射線被ばくも考慮しなければならないため最近はMRI検査のほうが推奨されています。妊娠初期に発見される卵巣腫瘍の内1〜3%が悪性腫瘍ですがそのほとんどが病期Tで早期悪性腫瘍です。

★腫瘍マーカーについて
卵巣腫瘍に用いられる腫瘍マーカーは妊娠の影響を受けやすいものがあり妊娠中の評価にはある程度の注意が必要になる場合があります。

腫瘍マーカー 妊娠中の正常上限値とその時期 非妊娠時の上限値
妊娠により増加 AFP 200〜300 ng/ml 妊娠9ヶ月始め 20 ng/ml
CA125 200〜350 U/ml 妊娠2ヶ月 35 U/ml
CA72-4 10 U/ml 妊娠中期〜後期 4 U/ml
TPA 200 U/ml 妊娠末期 110 U/ml
SCC抗原 2.0 ng/ml 妊娠3ヶ月 1.5 ng/ml
妊娠によって変化しない CEA 2.5 ng/ml 2.5 ng/ml
CA19-9 37 U/ml 37 U/ml
妊娠により減少 ハプトグロビン 90〜200 ml/dl 妊娠5ヶ月から低下 -
   
管理と治療 超音波検査、腫瘍マーカー検査、MRI検査などの所見から悪性の疑いがある場合は、原則として母体の保護が第一で、妊娠中であっても非妊娠時と同様な治療を行います。しかし妊娠週数によっては胎児の発育状況などを考慮する必要もあり家族と相談後治療時期を決定する場合もあります。

1)術前検査結果が卵巣に限局している可能性が高いとき
予定手術を行い、手術中に卵巣の迅速病理検査(手術中に卵巣の細胞検査を至急で行う)を行いその結果で最終的な手術術式を決めます。迅速病理診断が境界型悪性腫瘍(比較的に悪性度が弱い腫瘍細胞)で腫瘍自体が病側卵巣に限局しているようなときは、病巣部側の付属器摘出術(卵巣や卵管周囲の切除)を行い反対側の卵巣は肉眼的に正常であればそのままにしておきます。術後に再度摘出物の病理検査を行い組織型を確認します。組織型検査の結果悪性度の弱いものであればそのまま妊娠継続し経膣分娩を行います。しかし組織型が悪性度の強いものであったり腹腔内に転移の可能性が術後に診断されたときには、妊娠中であっても比較的に胎児への影響のない妊娠中期〜後期にかけて化学療法を行ったり、胎児の成熟を待って帝王切開術で分娩し同時に悪性卵巣腫瘍摘出術を行い、以後化学療法を追加する場合もあります。。
しかし、術前検査所見と異なり、術中の迅速病理診断が悪性度の強い腫瘍細胞であったり卵巣を超えて腹腔内の他の組織へ転移が疑われるときは早急な悪性卵巣腫瘍摘出術が必要で妊娠を中断せざるを得ない場合もあります。

2)術前検査で腹腔内や他への転移などが疑われる場合
術前検査で悪性卵巣腫瘍の進行度が病期U(卵巣以外に腫瘍が認められる)以上であれば、母体保護の観点から早急な悪性卵巣腫瘍摘出術が必要で、妊娠継続不可能な場合もあります。
 
   
予後 妊娠が悪性卵巣腫瘍の予後を左右したという報告はありません。左右するものは、手術時点と術後の腫瘍の進行度と組織型(悪性細胞の種類)によります。 
   
ひと言 妊婦健診初診時に卵巣腫瘍を合併している妊婦さんは非常に多く、そのほとんどの方は良性です。ごくごくまれに悪性腫瘍の場合があります。われわれ医師は、この「ごくごくまれな腫瘍」を早期発見するためにいろいろな検査を行います。また良性な卵巣腫瘍であっても妊娠経過にともなって大きくなり胎児の発育に障害を起こしたり、分娩時に障害を起こすこともあります。もしも卵巣に悪性腫瘍があると指摘された場合は、躊躇せず手術をお受けになることをお勧めします。なぜならば妊娠初期に発見される卵巣がんのほとんどが病期T(卵巣内に限局)であるという報告があり、妊娠継続が可能な場合が多いからです。 
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