現在、女性が妊娠すると胎児を子宮の中で成長させるために妊娠状態を維持するように変化が起こります。この状態を妊娠維持機能といい、女性ホルモン(内分泌系)と、胎児を他人(異物)と判断しないために免疫系の変化が起こります。
★内分泌の変化 (性ステロイドホルモン)
妊娠を維持するためのホルモンは、主に卵巣と胎盤で作られます。非妊娠時は周期的に女性ホルモンの分泌が起こるために月経が起こりますが、妊娠すると妊娠維持のために胎盤から女性ホルモン分泌され月経が止まります。
さらに胎盤のみで作られる妊娠性ホルモンが分泌され妊娠維持や胎児発育を促進します
ホルモン |
妊娠中の主な産生部位 |
働き |
エストロゲン |
エストラジオール |
妊娠初期:卵巣
(妊娠黄体)
妊娠7週以降:胎盤 |
妊娠維持、頚管熟化 |
エストリオール |
胎盤 |
プロゲステロン |
妊娠初期:卵巣
(妊娠黄体)
妊娠7週以降:胎盤 |
妊娠維持 |
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG) |
胎盤 |
卵巣(妊娠黄体)での
プロゲステロン産生の促進 |
ヒト胎盤性ラクトーゲン(hPL) |
胎盤 |
胎児の発育の促進 |
★免疫系の変化
お母さんのからだにとっては赤ちゃんは半分はお母さんと同じ遺伝子ですが、残りの半分はお父さんの遺伝子を受け継いでいるために、免疫学的には非自己(異物)となり、本来であれば免疫系からの攻撃を受けるはずです。しかし現実的にはこの攻撃を受けずに赤ちゃんは母体に守られて成長します。なぜ?攻撃を免れているのかは現在の医学では解明されておらず、いくつかの仮説にとどまっています。
1)免疫抑制説 胎盤の細胞が父親由来の遺伝情報を隠すか、または人類共通の遺伝情報に置き換えて、免疫担当細胞(キラーT細胞やナチュラルキラー細胞)からの攻撃を免れる。
2)免疫調節説 胎盤などから作られるサイトカインという物質が免疫担当細胞の障害を弱めている。
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