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甲状腺疾患合併妊娠

甲状腺疾患は妊娠適齢期の女性に多くみられ、全妊娠の0.2〜0.3%に及びます。日本で頻度の高いものは、バセドウ病・慢性甲状腺炎(橋本病)・甲状腺腫瘍などです。バセドウ病と橋本病は、自己免疫性疾患と考えられ母親の血液中の抗体が胎盤を通過して胎児や新生児の甲状腺に影響を及ぼします。また、甲状腺ホルモンは、胎児の神経系の発生や発達に重要です。先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)などでは、出生後に精神運動発達遅滞などが認められることがあります。そこで、甲状腺疾患合併妊娠の患者さんに問題となることは、以下のことです。

1) 胎盤を通過する母親の血液中の抗体が、分娩後に新生児の血液中に残って一過性の新生児甲状腺機能障害を起こす可能性がある。
2) 母親が未治療の甲状腺機能低下症であると、胎児の中枢神経系に影響を及ぼすことがある。
3) ヨード摂取量の欠乏や過剰摂取が、母児の甲状腺機能に影響を与える事がある。
 
   
 妊娠時一過性甲状腺機能亢進症 
妊娠によって母体中に増加するhCGというホルモンには極わずかですが甲状腺を刺激する作用があります。そのため妊娠初期には甲状腺ホルモンのわずかな上昇を認めます。全妊娠の2〜3%に認められ、つわり(妊娠悪阻)や多胎妊娠にともなうことが多いようです。妊娠中期以降になるとhCGの自然低下にともない軽快します。 
   
治療 通常は治療しません。しかし母体が甲状腺中毒症状になったり、糖尿病、心臓疾患などがあるときには治療の対象になります。 
   
 バセドウ病合併妊娠 
バセドウ病は、甲状腺のTSH受容体(甲状腺刺激ホルモン受容体)に対して自己抗体(TSH受容体抗体 TRAb)が産生されてしまい、これが甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの産生が過剰になってしまう疾患です。
代表的な症状として、メルセブルグの3徴候(動悸、甲状腺腫、眼球突出)があります。
 
   
妊娠が甲状腺機能に及ぼす影響 妊娠初期に増悪する事があります。妊娠中期〜末期は比較的安定していますが、分娩後急激に増悪する事があります。 
   
甲状腺機能亢進症が妊娠に及ぼす影響 治療が適切でコントロールが出来ていれば、母児ともに予後は良好です。未治療では、早産・死産・母体の周産期死亡などが起こる事があります。 
   
胎児と新生児への影響 バセドウ病治療中のお母さんの血液中には、甲状腺を刺激する自己抗体(TSH受容体抗体 TRAb)とそれを治療する薬が存在します。それらはともに胎盤を通過して胎児へ移行し、「自己抗体」は妊娠後期の胎児の甲状腺を刺激して機能亢進させてしまい、「治療薬」がそれを抑制する。すなわち、お母さんの身体と同じ状態になっています。ここで問題になるのは、赤ちゃんが産まれたあとです。妊娠中にお母さんの血液中から赤ちゃんの体内に移行した「自己抗体」と「治療薬」が体内から消失される時間に差があることです。「治療薬」は分娩後速やかに消失しますが、「自己抗体」は完全に消失するのに約3ヶ月ほどかかります。その間に「自己抗体」が赤ちゃんの甲状腺を刺激し続けて、一過性の甲状腺機能亢進症(新生児バセドウ病)を引き起こすことがあります。 
   
 甲状腺機能低下症合併妊娠 
甲状腺機能低下には、慢性甲状腺炎(橋本病)、放射性ヨード治療後、手術による甲状腺摘出後などがあります。また甲状腺ホルモンブロッキング抗体がが存在する場合もあります。甲状腺機能低下症は、適切な治療を行っていれば母児ともに妊娠に対する影響は有りません。甲状腺ホルモン補充療法は安全な治療です。未治療では、流産や早産、子癇、低出生体重などのリスクがあり、さらに妊娠中期に母体の甲状腺ホルモン値が低いと、胎児の中枢神経系の発達に影響を及ぼし、精神運動発達遅滞などを引き起こす可能性があります。 
   
甲状腺機能低下症治療中に妊娠した場合 妊娠中は甲状腺ホルモンの需要量が増えるため、個人差はありますが妊娠前の処方量よりも50%前後増量する場合があります。 
   
甲状腺機能低下症治療中に妊娠を希望する場合 妊娠が成立した場合は上記のように甲状腺ホルモン補充療法の増量が必要です。またブロッキング抗体陽性の場合は胎児へ抗体が移行し胎児の甲状腺機能低下を起こしますが、時間とともに抗体は自然消失します。 
   
甲状腺機能低下症治療の既往のある人が妊娠した場合 血液検査でFT3、FT4、TSH、TSH受容体抗体などを検査して、治療が必要か否かを決定します。 
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