考えられる状況 |
腹痛は妊娠中によく見られる症状で、その原因は妊娠が原因によるものから、婦人科・泌尿器科・内科さらに外科的なものまで多肢にわたります。また緊急処置や手術が必要なもの、安静にしていれば自然に軽快するものもあり診断には注意が必要です。
妊娠中に発症する急性腹症は、全妊婦さんの0.2〜2%程度で、卵巣のう腫(1000〜1500人に1人)、虫垂炎(1500〜2000人に1人)、胆のう炎(4000〜5000人に1人)などがあります。 |
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注意点 |
妊娠中であっても、非妊娠時と同様に腹痛は発症した部位や痛みの種類によってある程度の臓器や腹部疾患を推測することが出来ます。 痛みを感じたからといってあせらずに、妊娠経過やその他の症状(不正出血、子宮収縮など)の有無、食事との関係、便秘や下痢の有無、今までに罹った病気、などを冷静に考えてください。それらを総合的に関連付けて病院を受診して医師に伝えるようにしましょう。
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考えられる病名 |
消化器系の腹痛
1)便秘
妊娠するとホルモン環境が変わりさらに子宮が大きくなることで大腸を圧迫して便秘しやすくなり左下腹部痛を起こすことがあります。妊娠を継続させるプロジェステロンというホルモンの働きで大腸の運動性が低下し(弛緩性便秘)、さらに増大した子宮によって圧迫されるために排泄遅延が起こり大腸で通常以上に水分を吸収され過ぎて悪化すると考えられています(直腸性便秘)。むやみに浣腸などしないで、主治医と相談の上、緩下剤などを用いて治療してください。
2)下痢 下痢を伴った腹痛に対しては、悪化すると電解質(母体中の塩分など)バランスが崩れ脱水症を起こし、さらに子宮収縮を引き起こす可能性があります。ウイルス性腸炎、食中毒やその他の原因を調べたうえで、問題の無いものであれば整腸剤などでフォローアップします。
3)虫垂炎(盲腸炎) 吐き気、嘔吐、倦怠感などの症状から始まることが多く、続いて右下腹部痛が起こります。妊娠中は虫垂(盲腸)が大きくなった子宮によって通常の場所より右上方へ押し上げられていることが多く典型的な症状を示さないことがあります。また血液検査においても妊娠によって変化しているために診断困難なこともあります。診断が付けば症状に応じて内科的に抗生物質の投与をしたり、時には妊娠中であっても外科的に手術が必要になることもあります。
その他
1)尿管結石・腎臓結石
腹痛ではじまることもありますが、腰背部痛が多く血尿をともなうことがあります。ときには激痛で発症することもあります。
2)尿路感染症(膀胱炎を含む)
妊娠中は、ホルモンの影響や子宮の増大などで非妊娠時に比べて膀胱炎や腎盂炎に罹りやすくなっています。残尿感や尿の異常を感じた場合は膀胱炎の可能性があり、、腰背部痛(背中を軽くたたくと痛みが増す)や発熱などがあるときは腎盂炎の可能性があります。いづれも早めに診察を受けてください。予防のためには尿意をあまり我慢せず頻回にトイレに行く習慣をつけてください。
3)胆石
性別で見ると女性の方が無症状でも胆石所持の割合が多く、原因としても女性ホルモンのバランスが崩れることによって胆石が出来やすいとされ、さらに妊娠回数の多い女性は妊娠中に胆道が圧迫されて胆汁の流れが悪くなり妊娠によってホルモンに変化が起こるため胆石になりやすいと考えられています。主な症状は、みぞおちの痛みや右脇腹の痛み、背中の痛みや張り、腰痛、肩凝り、大量の汗、吐き気や嘔吐、胸部の疼痛を起こします。痛みは長時間続くことはなく一時的でその後も全く通常の状態になります。胆嚢や胆管が炎症を起こすと39度近い高熱を出すことがあり、胆管結石では胆管で肝臓から流れ込む胆汁が胆石によってせき止められてしまったために目や皮膚が黄色になる黄疸症状を引き起こすことがあり黄疸によって尿の色が濃くなることもあります。 |