血液凝固因子障害 |
血液凝固因子障害とは、血液を凝固(固める)させる物質に異常がある病気のことです。大きく分けると出血をしやすくなる病気と、血液が凝固しやすく血栓を作りやすい(血管内で血液が固まりやすい)病気があります。 |
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出血しやすい病気 |
血小板の異常や血液凝固因子の欠乏などが原因で、ほとんどが先天的な病気です。多くはすでに妊娠以前に診断され治療を行っている場合がほとんどです。
1)先天性無フィブリノーゲン血症
この因子は接着剤の役目をするため、欠乏症があると妊娠初期に流産を繰り返すことがあります。妊娠中の注意点は、フィブリノーゲン製剤を定期的に投与して血液中の濃度を一定以上に保つことです。特に妊娠後半は胎盤早期剥離などを起こしやすいために十分な補充を行います。
2)von Willebrand病
女性に多くみられる先天性の出血性疾患です。T形・U型・V型があり、特にU型で産褥期出血の危険や血小板の減少があります。また分娩中に会陰切開創の血腫や外陰部血腫を形成しやすいため、分娩時に吸引分娩を避けるなどの注意を要します。
治療は第[因子やvon Willebrand因子の補充療法を行います。 |
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血栓を作りやすい病気 |
先天性と後天性に分けられます。先天性の異常症はアンチトロンビンV異常症(AT−V異常症)やプロテインS異常症があり、後天性の異常症は深部静脈血栓症や抗リン脂質抗体症候群(APS)などがあります。
このような血栓を作る病気が妊娠〜産褥期に問題になるのは、習慣性流産・子宮内胎児発育遅延・深部静脈血栓症肺塞栓症です。
管理と治療は、欠損因子の補充療法と、ヘパリンなどの抗凝固療法が中心になります。帝王切開術後に深部静脈血栓症の危険性が正常に比べて10倍以上高いといわれているため、分娩は経腟分娩を選択することが好ましいです。もし帝王切開術を選択する場合は、十分な血栓予防策と早期離床が重要です。 |