子宮頚管無力症 |
頚管無力症とは、妊娠中期頃(妊娠15週〜30週)から痛みや子宮収縮を自覚することもなく子宮頚管長が短くなり子宮口が軟化開大してしまい破水〜流早産する状態をいいます。頻度は全妊娠の0.1〜0.3%程度といわれ、妊娠のたびに繰り返す傾向があります。 |
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原因 |
はっきりとした原因は分かっていません。現在考えられているものは以下の通りです。
@ 絨毛膜羊膜炎などの炎症性疾患による頚管結合組織の破綻
A 分娩時の外傷
B 先天的な子宮頚管の結合組織の異常
C 子宮頚部円錐切除術などの手術の既往 |
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症状 |
絨毛膜羊膜炎などの炎症性疾患による場合の多くは子宮収縮をともなうことがあります。ときに不正出血を起こすこともありますが、厳密な意味での子宮頚管無力症の多くは無症状なことが多く内診などにより胎児の下降や子宮口の軟化に気付きます。経産婦の方は、前回の妊娠経過により比較的簡単に診断できますが、初産婦の方はなかなか気が付きにくく診断が遅れることが有ります。 |
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診断 |
内診により胎児下降と子宮口軟化および開大を確認し超音波診断によって内子宮口の開大と頚管長短縮を調べます。正常な子宮口は内子宮口から外子宮口までの長さ(子宮頚管長)は3.5〜4p以上あります。胎児が下がり始めて、この長さが、3.0p前後に短縮し始めると流産や早産の可能性が増加します。
頚管無力症の超音波写真は・・・こちらへ
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治療 |
基本的には入院安静加療が中心になります。原因に絨毛膜羊膜炎などの感染症があるときには抗生物質などを使い炎症を抑える治療を行います。さらに子宮収縮抑制剤を用いて子宮の収縮を抑える治療を行いますが、頚管長がさらに短縮するときには、子宮口を縛る手術を行います(子宮頚管縫縮術)。 |
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頚管長 |
頚管長とは外子宮口と内子宮口の間の長さをいいます。妊娠中期では正常で4.0p以上ありますが、妊娠後期になってくると徐々に短縮してきます。 |
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子宮頚管縫縮術 |
子宮頚管縫縮術とは、頚管無力症の治療のために行う手術です。縫縮糸で子宮頚管を縛り、軟化して拡がってしまった子宮口を縮小させて妊娠を持続させる手術で、通常妊娠12週以降に行います。代表的な術式は、マクドナルド手術とシロッカー手術があります(左図)。子宮頚管に糸のかけ方が違うだけで、糸を硬く縛ることで子宮頚管を縮小させます。 |
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超音波診断写真 |
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妊娠32週正常子宮頚管
頚管の長さは、外子宮口から内子宮口間で36.8oあります。 |
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妊娠25週頚管無力症
矢印で示した内子宮口が外子宮口向けて(白矢印の部分)開き始めています。実際の子宮頚管の長さは8.8oに短縮されています。 |
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妊娠16週胎胞脱出
胎児の入っている卵膜が軟化、短縮した子宮頚管を越えて腟内に出てきてしまいました。腟内の白矢印の部分は羊水、胎児(F)は内子宮口近くまで下がってきています。
子宮頚管の長さは13.5oに短縮されています。 |
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