妊娠中の心雑音 |
心雑音は通常正常な心臓では発生しない異常な心音であり、心臓病の診断の目安となりますが、妊娠中は約9割の妊婦さんに認められます。 |
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心音 |
心音は通常心臓の収縮によって4種類発生します。
T音(いちおん) 心室が収縮する時に心房弁が閉じる音。ドックンという音のドッです。
U音(におん) 心室が拡張する時に心室弁が閉じる音。ドックンという音のクンです。
V音(さんおん) 心室の拡張早期に心房から勢いよく心室に流入した血液が心室壁を振動させて生じる音です。
W音(よんおん) 心室収縮時の血液流入に伴う衝突音。 |
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心雑音 |
心雑音の強さ(音の大きさ)はLevineの6段階分類法という方法でgrade1〜6までに分類されています。
また雑音の聞こえる時期によって以下の3種類に分類します。
1)収縮期雑音
心室が収縮しているときに出る雑音です。心音でいえばI音とII音の間に聞える雑音で、ドッとクンの間で聞こえる雑音です。
2)拡張期雑音
心室が拡張しているときに出る雑音です。心音で言えばII音とI音の間に聞える雑音で、クンとドッの間で聞こえる雑音です。
3)混在雑音
T音を超えて鳴りつづけるものや、U音を越えて鳴り続けるものをいいます。 |
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妊娠中の雑音 |
収縮期雑音は、正常妊婦さんの90%前後に認められgrade2程度までは正常とされています。またこの雑音は分娩後1週間ほどで自然に消失します。拡張期雑音を聴取することも有りますが、通常正常妊婦さんではまれです。妊娠中にgrade3以上の強さの心雑音を確認した場合には心疾患を疑います。 |
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心雑音を起こす疾患 |
弁膜症、先天性心疾患、虚血性心疾患、拡張型(肥大型)心筋症、甲状腺機能亢進症、など |
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検査 |
1)胸部レントゲン検査
正常(非妊娠時)の胸部レントゲン検査に比べて、妊娠中は子宮が大きくなるために横隔膜を上方へ押上げ、その結果として心臓はからだの左上方へ押上げられています。
2)心電図
正常妊娠では、胸部レントゲンと同様に左に片寄った変化を認めることはありますが、心電図上に明らかな病的な変化は認められません。
3)心臓超音波検査
妊娠中の心臓検査の中では母体や胎児に対してもっとも安全な検査です。妊娠に伴い左心系(左心房・左心室)にやや変化を認めることがありますが、心臓の収縮する状態には変化を認めません。
4)心臓カテーテル検査
心臓の実際の収縮圧、血液の流れる速度と血液量などの診断には必要です。とくに分娩中に心臓の管理が必要なときには、Swan-Ganzカテーテルというものを肺動脈に入れることもあります。 |