妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A (一般の方対象)
平成21年11月9日
社団法人 日本産科婦人科学会
Q1:
妊娠している人は一般の妊娠していない人に比べて新型インフルエンザに感染した場合、症状が重くなるのでしょうか?
A1:妊婦は肺炎などを合併しやすく、基礎疾患がある方と同様に重症化しやすいことが明らかとなりました。諸外国での状況は妊婦の場合、妊娠週数が進むにつれ、より重症化しやすいことを示しています。2009年10月16日、WHO(世界保健機構)は、「妊娠28週以降の妊婦は特に重症化の危険が高い」、同10月30日には「妊婦はそうでない一般集団より集中治療室を必要とする確率が10倍高い」という声明を発表しました。このように、妊娠末期になるにつれ重症化しやすいので、ワクチン接種を受けるかどうかを決断する際や、発熱時に抗インフルエンザ薬(タミフル)を服用すべきか否かを決断する際の参考にして下さい。
Q2: 妊婦が新型インフルエンザワクチンを受けても大丈夫でしょうか?
A2: 安全かつ有効であると考えられています。季節性ワクチンの安全性 に関しては以下を参照して下さい
(http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html)。新型インフルエンザワクチンの安全性については、WHO(世界保険機構、2009年10月30日)が以下「」内の声明を発表しました。「新型インフルエンザワクチンの副作用について専門家らが検討したが、特に季節性インフルエンザワクチンの副作用と異なった点はなく、たいへん良好な結果であった。初期段階での結果は安心すべきものであったが、今後とも副作用については注視していくべきである。」
今回の新型インフルエンザワクチンにはチメロサール等の保存剤が使用されていない製剤も用意されています(プレフィルドシリンジ製剤、あらかじめ注射器に注射液が充てんされている)。妊婦で希望する方はこのワクチン接種を受けることができます。
新型インフルエンザワクチンと季節性インフルエンザワクチンを同時に接種することも可能です。また、妊婦に対しては当面、2回の新型インフルエンザワクチン接種が推奨されています。ただし、卵アレルギーのある方(鶏卵や鶏卵・鶏肉が原材料に含まれている食品類をアレルギーのために日常的に避けている方)は、いずれのワクチンでもショック(血圧が急激に低下し、気分が悪くなり、治療が必要となる状態)が引き起こされる可能性がありますので、ワクチンはお勧めできません。日常的に鶏卵・鶏肉を避けている方はワクチンを受けず、もし発症(発熱)したら、「ただちに抗インフルエンザ薬(タミフル)服用(1日2錠を5日間)」をお勧めします。また発症しなくとも、罹患者と濃厚接触した場合には「ただちに抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)の予防的服用(10日間)」をお勧めします。
アレルギーあるいは喘息のある方も副反応が出やすいので、ワクチン接種後30分間は接種を受けた病(医)院にとどまり、特段かわりがないことを確認後に帰宅します。帰宅後も気分不快・嘔気・動悸などが出現したら早めに受診して下さい。
Q3:妊婦にインフルエンザ様症状(38℃以上の発熱と鼻汁や鼻がつまった症状、のどの痛み、咳)が出た場合、どのようにすればよいでしょうか?
A3:インフルエンザであった場合、症状発現後48時間以内の抗インフルエンザ薬(タミフル)服用開始が重症化防止に最も効果があります。予め医療機関に電話をして早期に受診し、タミフルによる治療を受けます。この際、他の健康な妊婦や褥婦への感染を予防するために、かかりつけ産婦人科医を直接受診することは極力避け、地域の一般病院受診をお勧めします。あらかじめ受診する病院を決めておくと安心です。もし、一般病院での受診が困難な場合には、かかりつけ産婦人科医が対応します。この際にも事前に電話をして受診します。これは他の妊婦への接触を避けるために非常に重要な注意点になります。当然ですが、産科的問題(切迫流早産様症状、破水、陣痛発来、分娩など)に関しては、新型インフルエンザが疑われる場合であっても、重症でない限り、かかりつけ産婦人科施設が対応します。いずれの病院へ受診する際にもマスク着用での受診をお勧めします。これは他の健康な方に感染させないための重要なエチケットとなります。
新型インフルエンザであっても簡易検査ではしばしばA型陰性の結果が出ることに注意が必要です。周囲の状況(その地域で新型インフルエンザが流行しているなど)から新型インフルエンザが疑われる場合には、簡易検査結果いかんにかかわらずタミフルの服用をお勧めします。妊婦は基礎疾患がある方と同様に重症化しやすいことが明らかとなったために、このようなお勧めをしています。
Q4: 妊婦の新型インフルエンザ感染が確認された場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A4:
ただちに抗インフルエンザ薬(タミフル、75mg錠を1日2回、5日間)を服用するよう、お勧めします。
Q5:
妊娠した女性が新型インフルエンザ感染者と濃厚接触(ごく近くにいたり、閉ざされた部屋に同席した場合)した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A5:
抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)服用(予防目的)をお勧めします。ただし、予防される期間は予防薬を服用している期間に限られます。また、予防効果は100%ではありませんので予防的に服用している間であっても発熱が有った場合には受診することをお勧めします。
Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)はお腹の中の赤ちゃんに大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A6:
2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した赤ちゃんに有害な副作用(有害事象)の報告はない」との記載があります。また、これら薬剤服用による利益は、可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられています。催奇形性(薬が奇形の原因になること)に関して、タミフルは安全であることが最近報告されました。抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の安全性については以下を参照して下さい
(http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html)。
Q7: 抗インフルエンザ薬 (タミフル、リレンザ) の予防投与 (インフルエンザ発症前) と治療投与 (インフルエンザ発症後)
で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A7: 米国疾病予防局の推奨
(http://www.cdc.gov/H1N1flu/pregnancy/antiviral_messages.htm)
では以下のようになっていますので、日本でも同様な投与方法が推奨されています。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)10日間
治療のための投与:75mg錠 1日2回(計150mg)5日間
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)10日間
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)5日間
Q8: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A8:
予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。
Q9: 母親が感染した場合、新生児・乳児への注意点は?
A9:
児への感染が心配されます。児の観察をしっかり行い、発症の早期発見に努めます。児が感染した場合の症状は「活気がない、母乳・ミルクの飲みが悪い、呼吸回数が多くて苦しそうだ、呼吸が止まったように見受けられる時がある、発熱がある、咳・鼻水・鼻閉がある、少しの刺激にも過敏に反応する」などですので、これらの有無に注意します。もし、これらのいずれかが出現した場合には、タミフルの早期投与開始が重症化防止に奏功する可能性があるので、できるだけ早く小児科医を受診します。児が未感染の場合、無防備な児への接触は児への感染危険を高めますので、児のケアや観察時には次Q&Aを順守します。
Q10: 感染している(感染した)母親が授乳することは可能でしょうか?
A10:
母乳を介した新型インフルエンザ感染は現在のところ知られていません。したがって、母乳は安全と考えられます。しかし、母親が直接授乳や児のケアを行なうためには以下の3条件がそろっていることが必要です。
1)タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2)熱が下がって平熱となっていること
3)咳や、鼻水が殆どないこと
これら3条件を満たした場合、直接授乳することや児と接触することができます。ただし、児と接触する前に手をよく洗い、清潔な服に着替えて(あるいはガウンを着用し)、マスクを着用します。また、接触中は咳をしないよう努力することをお勧めします。上記3条件を満たしていない間は、母児は可能なかぎり別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与えることをお勧めします。このような児への感染予防行為は発症後7日~10日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状がない場合、他人に感染させる可能性は低い(まったくなくなったわけではない)と考えられていますので通常に近い母児接触が可能となります。
本件Q&A改定経緯:
初版 平成21年5月19日
2版 平成21年6月19日
3版
平成21年8月4日
4版 平成21年8月25日
5版 平成21年9月7日
6版 平成21年9月28日
7版
平成21年10月22日
8版 平成21年11月9日
平成21年10月22日
社団法人 日本産科婦人科学会
Q1:
妊娠している人は一般の妊娠していない人に比べて新型インフルエンザに感染した場合、症状が重くなるのでしょうか?
A1:妊婦は肺炎などを合併しやすく、基礎疾患がある方と同様に重症化しやすいことが明らかとなりました。
Q2: 妊婦が新型インフルエンザワクチンを受けても大丈夫でしょうか?
A2:
安全かつ有効であると考えられています。季節性インフルエンザワクチンに関しては米国では長い歴史があり、安全性と有効性が証明されています。米国では毎年、約60万人の妊婦さんが季節性インフルエンザワクチン接種を受けていますが、大きな問題は起こっておりません。妊娠中にワクチン接種を受けた母親からの赤ちゃんについても有害事象は観察されていません。新型インフルエンザワクチンも季節性インフルエンザワクチンと同様な方法で作られているので同様に安全と考えられています。ワクチンを受けることによる利益と損失(副作用など)を考えた場合、利益のほうがはるかに大きいと世界保健機構(WHO)も考えており、妊婦に対する新型インフルエンザワクチン接種を推奨しています。また、ワクチンを受けるということは「自分を守る」とともに、「まわりの人を守る」ことにつながります(妊娠中にワクチンを受けると出生した赤ちゃんも数ヶ月間インフルエンザになりにくいことが証明されています)。
ワクチンの安全性に関しては以下を参照して下さい
(http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html)。
今回の新型インフルエンザワクチンにはチメロサール等の保存剤が使用されていない製剤も用意されています(プレフィルドシリンジ製剤、あらかじめ注射器に注射液が充てんされている)。妊婦で希望する方はこのワクチン接種を受けることができます。
新型インフルエンザワクチンと季節性インフルエンザワクチンを同時に接種することも可能です。また、妊婦に対しては当面、2回の新型インフルエンザワクチン接種が推奨されています。ただし、卵アレルギーのある方(鶏卵や鶏卵・鶏肉が原材料に含まれている食品類をアレルギーのために日常的に避けている方)は、いずれのワクチンでもショック(血圧が急激に低下し、気分が悪くなり、治療が必要となる状態)が引き起こされる可能性がありますので、ワクチンはお勧めできません。日常的に鶏卵・鶏肉を避けている方はワクチンを受けず、もし発症(発熱)したら、「ただちに抗インフルエンザ薬(タミフル)服用(1日2錠を5日間)」をお勧めします。また発症しなくとも、罹患者と濃厚接触した場合には「ただちに抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)の予防的服用(10日間)」をお勧めします。
Q3:妊婦にインフルエンザ様症状(38℃以上の発熱と鼻汁や鼻がつまった症状、のどの痛み、咳)が出た場合、どのようにすればよいでしょうか?
A3:インフルエンザであった場合、症状発現後48時間以内の抗インフルエンザ薬(タミフル)服用開始が重症化防止に最も効果があります。予め医療機関に電話をして早期に受診し、タミフルによる治療を受けます。この際、他の健康な妊婦や褥婦への感染を予防するために、かかりつけ産婦人科医を直接受診することは極力避け、地域の一般病院受診をお勧めします。あらかじめ受診する病院を決めておくと安心です。もし、一般病院での受診が困難な場合には、かかりつけ産婦人科医が対応します。この際にも事前に電話をして受診します。これは他の妊婦への接触を避けるために非常に重要な注意点になります。当然ですが、産科的問題(切迫流早産様症状、破水、陣痛発来、分娩など)に関しては、新型インフルエンザが疑われる場合であっても、重症でない限り、かかりつけ産婦人科施設が対応します。いずれの病院へ受診する際にもマスク着用での受診をお勧めします。これは他の健康な方に感染させないための重要なエチケットとなります。
新型インフルエンザであっても簡易検査ではしばしばA型陰性の結果が出ることに注意が必要です。周囲の状況(その地域で新型インフルエンザが流行しているなど)から新型インフルエンザが疑われる場合には、簡易検査結果いかんにかかわらずタミフルの服用をお勧めします。妊婦は基礎疾患がある方と同様に重症化しやすいことが明らかとなったために、このようなお勧めをしています。
Q4: 妊婦の新型インフルエンザ感染が確認された場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A4:
ただちに抗インフルエンザ薬(タミフル、75mg錠を1日2回、5日間)を服用するよう、お勧めします。
Q5:
妊娠した女性が新型インフルエンザ感染者と濃厚接触(ごく近くにいたり、閉ざされた部屋に同席した場合)した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A5:
抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)服用(予防目的)をお勧めします。ただし、予防される期間は予防薬を服用している期間に限られます。また、予防効果は100%ではありませんので予防的に服用している間であっても発熱が有った場合には受診することをお勧めします。
Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)はお腹の中の赤ちゃんに大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A6:
2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した赤ちゃんに有害な副作用(有害事象)の報告はない」との記載があります。また、これら薬剤服用による利益は、可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられています。催奇形性(薬が奇形の原因になること)に関して、タミフルは安全であることが最近報告されました。抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の安全性については以下を参照して下さい
(http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html)。
Q7: 抗インフルエンザ薬 (タミフル、リレンザ) の予防投与 (インフルエンザ発症前) と治療投与 (インフルエンザ発症後)
で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A7: 米国疾病予防局の推奨
(http://www.cdc.gov/H1N1flu/pregnancy/antiviral_messages.htm)
では以下のようになっていますので、日本でも同様な投与方法が推奨されています。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)10日間
治療のための投与:75mg錠 1日2回(計150mg)5日間
なお、本邦の2008年
Drugs in Japan
によれば、治療には上記量を5日間投与、予防には上記量を7日~10日間投与となっています。
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)10日間
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)5日間<
なお、本邦の2008年
Drugs in Japan によれば、治療には上記量を5日間吸入、予防には上記量を10日間吸入となっています。
Q8: 予防投与の場合、予防効果はどの程度持続するのでしょうか?
A8: タミフル、リレンザともに2008年 Drugs in
Japan によれば、これらを連続して服用している期間のみ予防効果ありとされています。
Q8: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A8:
予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。
Q9: 母親が感染した場合、新生児・乳児への注意点は?
A9:
児への感染が心配されます。児の観察をしっかり行い、発症の早期発見に努めます。児が感染した場合の症状は「活気がない、母乳・ミルクの飲みが悪い、呼吸回数が多くて苦しそうだ、呼吸が止まったように見受けられる時がある、発熱がある、咳・鼻水・鼻閉がある、少しの刺激にも過敏に反応する」などですので、これらの有無に注意します。もし、これらのいずれかが出現した場合には、タミフルの早期投与開始が重症化防止に奏功する可能性があるので、できるだけ早く小児科医を受診します。児が未感染の場合、無防備な児への接触は児への感染危険を高めますので、児のケアや観察時には次Q&Aを順守します。
Q10: 感染している(感染した)母親が授乳することは可能でしょうか?
A10:
母乳を介した新型インフルエンザ感染は現在のところ知られていません。したがって、母乳は安全と考えられます。しかし、母親が直接授乳や児のケアを行なうためには以下の3条件がそろっていることが必要です。
1)タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2)熱が下がって平熱となっていること
3)咳や、鼻水が殆どないこと
これら3条件を満たした場合、直接授乳することや児と接触することができます。ただし、児と接触する前に手をよく洗い、清潔な服に着替えて(あるいはガウンを着用し)、マスクを着用します。また、接触中は咳をしないよう努力することをお勧めします。上記3条件を満たしていない間は、母児は可能なかぎり別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与えることをお勧めします。このような児への感染予防行為は発症後7日~10日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状がない場合、他人に感染させる可能性は低い(まったくなくなったわけではない)と考えられていますので通常に近い母児接触が可能となります。
本件Q&A改定経緯:
初版 平成21年5月19日
2版 平成21年6月19日
3版
平成21年8月4日
4版 平成21年8月25日
5版 平成21年9月7日
6版 平成21年9月28日
7版 平成21年10月22日
平成21年8月25日
社団法人 日本産科婦人科学会
★平成21年8月25日改訂:青文字部分が今回改訂された箇所になります。
Q1: 妊娠している人は一般の妊娠していない人に比べて新型インフルエンザに感染した場合、症状が重くなるのでしょうか?
A1: 妊婦は肺炎などを合併しやすく、重症化しやすいことが明らかとなりました。
Q2: 妊婦にインフルエンザ様症状(38℃以上の発熱と鼻汁や鼻がつまった症状、のどの痛み、咳)が出た場合、どのようにすればよいでしょうか?
A2: かかりつけ産婦人科医を直接受診することは極力避け、地域の一般病院にあらかじめ電話をしてできるだけ早期に受診します。あらかじめ受診する病院を決めておくと安心です。症状発現後48時間以内に抗インフルエンザ薬(タミフルが勧められる)服用を開始すると最も重症化防止に有効とされています。発熱、のどの痛み、咳等の症状出現後はできるだけ早い受診をお勧めします。WHOは新型インフルエンザ感染が疑われる場合には確認検査結果を待つことなく、できるかぎり早期のタミフル服用開始を勧めています。かかりつけ産婦人科医受診を避けるのは「感染すると重症化しやすい妊婦から妊婦への感染を防止するため」です。
Q3: 妊婦の新型インフルエンザ感染が確認された場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A3: 早期の抗インフルエンザ薬(タミフル、75mg錠を1日2回、5日間)服用をお勧めします。
Q4: 妊娠した女性が新型インフルエンザ感染者と濃厚接触(ごく近くにいたり、閉ざされた部屋に同席した場合)した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A4: 抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)服用(予防目的)をお勧めします。
Q5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)はお腹の中の赤ちゃんに大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A5: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した赤ちゃんに有害な副作用(有害事象)の報告はない」との記載があります。また、これら薬剤服用による利益は、可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられています。催奇形性(薬が奇形の原因になること)に関して、タミフルは安全であることが最近報告されました。
Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の予防投与(インフルエンザ発症前)と治療投与(インフルエンザ発症後)で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A6: 米国疾病予防局の推奨
(http://www.cdc.gov/h1n1flu/recommendations.htm)では以下のようになっていますので、日本でも同様な投与方法が推奨されています。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)
治療のための投与:75mg錠 1日2回(計150mg) 5日間
なお、日本の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間投与、予防には上記量を7日~10日間投与となっています。
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)
なお、日本の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間吸入、予防には上記量を10日間吸入となっています。
Q7: 予防投与の場合、予防効果はどの程度持続するのでしょうか?
A7: タミフル、リレンザともに2008年Drugs in Japanによれば、これらを連続して服用している期間のみ予防効果ありとされています。
Q8: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A8: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。
Q9: 感染している母親が授乳することは可能でしょうか?
A9: 母乳を介した新型インフルエンザ感染の可能性は現在のところ知られていません。したがって、母乳は安全と考えられます。しかし、母親が直接授乳や児のケアを行うためには以下の3条件がそろっていることが必要です。
1) タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2) 熱が下がって平熱となっていること
3) 咳や、鼻水が殆どないこと
これら3条件を満たした場合、直接授乳することや児と接触することができます。ただし、児と接触する前に手をよく洗い、清潔な服に着替えて(あるいはガウンを着用し)、マスクを着用します。また、接触中は咳をしないよう努力することをお勧めします。上記3条件を満たしていない間は、母児は可能なかぎり別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与えることをお勧めします。このような児への感染予防行為は発症後7日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状がない場合、他人に感染させる可能性は低いと考えられています。
本件Q&A改定経緯:
初版 平成21年5月19日
2版 平成21年6月19日
3版 平成21年8月4日
4版 平成21年8月25日
★平成21年6月19日改訂:青文字部分が今回改訂された箇所になります。
妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A (一般の方対象)
Q1: 妊娠している人は一般の妊娠していない人に比べて新型インフルエンザに感染した場合、症状が重くなるのでしょうか?
A1: 妊娠した女性が季節性インフルエンザ(通常のインフルエンザ)に感染すると症状が重くなり肺炎などを引き起こすことがあります。 重症化するとお腹の中の赤ちゃんにも悪影響が出ることがあります。新型インフルエンザに関してはまだデータが不十分ですが妊婦は重症化しやすいことが示唆されています。
Q2: 妊娠している婦人に38℃以上の発熱と鼻汁や鼻がつまった症状、のどの痛み、咳などの症状が出た場合、どのようにすればよいでしょうか?
A2: かかりつけ産婦人科医を直接受診することは極力避け、地域の一般病院にあらかじめ電話をして受診します。このようにして妊婦から妊婦への感染防止をはかります。また、新型インフルエンザ感染が疑われる症状(発熱、鼻汁や鼻がつまった症状、のどの痛み、咳)が出現した場合を想定して、あらかじめ受診する病院を決めておくと安心です。
Q3: 妊娠した女性が新型インフルエンザ感染が確認された場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A3: 米国では妊娠している女性に対して抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の投与が勧められています。日本においても同様の処置を勧めています。医師と相談の上、抗インフルエンザ薬を使用するかどうか決めてください。
Q4: 妊娠した女性が新型インフルエンザ感染者と濃厚接触(ごく近くにいたり、閉ざされた部屋に同席した場合)した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A4: 米国では抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の投与が勧められています。日本においても濃厚接触した妊婦に説明同意を得た上で、それらの予防投与が勧められています。
Q5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)はお腹の中の赤ちゃんに大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A5: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した赤ちゃんに有害な副作用(有害事象)の報告はない」との記載があります。
Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の予防投与(インフルエンザ発症前)と治療投与(インフルエンザ発症後)で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A6: 米国疾病予防局の推奨(http://www.cdc.gov/h1n1flu/recommendations.htm)では以下のようになっていますので、日本でも同様な投与方法が推奨されています。
1. タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)、 治療のための投与:75mg錠 1日2回(計150mg)5日間
なお、日本の2008年Drugs
in Japanによれば、治療には上記量を5日間投与、予防には上記量を7日~10日間投与となっています。
2. リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)、治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)
なお、日本の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間吸入、予防には上記量を10日間吸入となっています。
Q7: 予防投与の場合、予防効果はどの程度持続するのでしょうか?
A7: タミフル、リレンザともに2008年Drugs in
Japanによれば、これらを連続して服用している期間のみ予防効果ありとされています。
Q8: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A8: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。
Q9: 抗ウィルス剤を服用しながら授乳することは可能でしょうか?
A9: 母乳自体による新型インフルエンザ感染の可能性は現在のところ知られていません。季節性インフルエンザでは母乳感染は極めてまれです。授乳期に抗ウィルス薬を使用する場合は、担当の医師と相談の上授乳を続けるかどうか決めてください。なお米国疾病予防局の推奨では抗ウィルス剤を服用しながら、赤ちゃんに授乳することは可能であるとされています。同時に赤ちゃんへの感染リスクを最小限にするため頻繁に手洗いしたりマスクをつけるなどの処置を必要とします。
母児分離を行なうべきとの勧告は今のところなされていません。
平成21年6月19日
社団法人 日本産科婦人科学会
Q1:
妊娠している人は一般の妊娠していない人に比べて新型インフルエンザに感染した場合、症状が重くなるのでしょうか?
A1:妊娠した女性が季節性インフルエンザ(通常のインフルエンザ)に感染すると症状が重くなり肺炎などを引き起こすことがあります。 重症化するとお腹の中の赤ちゃんにも悪影響が出ることがあります。新型インフルエンザに関してはまだデータが不十分ですが季節性インフルエンザと同様であると推定されています。
Q2:妊娠している婦人に38℃以上の発熱と鼻汁や鼻がつまった症状、のどの痛み、咳などの症状が出た場合、どのようにすればよいでしょうか?
A2:発熱外来を開設している病院(地域の保健所に連絡することによりわかります)への受診を勧めます。
Q3: 妊娠した女性が新型インフルエンザ感染が確認された場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A3: 米国では妊娠している女性に対して抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の投与が勧められています。日本においても同様の処置を勧めています。医師と相談の上、抗インフルエンザ薬を使用するかどうか決めてください。
Q4:
妊娠した女性が新型インフルエンザ感染者と濃厚接触(ごく近くにいたり、閉ざされた部屋に同席した場合)した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A4:
米国では抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の投与が勧められています。日本においても濃厚接触した妊婦に説明同意を得た上で、それらの予防投与が勧められています。
Q5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)はお腹の中の赤ちゃんに大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A5: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した赤ちゃんに有害な副作用(有害事象)の報告はない」との記載があります。
Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の予防投与(インフルエンザ発症前)と治療投与(インフルエンザ発症後)で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A6: 米国疾病予防局の推奨(http://www.cdc.gov/h1n1flu/recommendations.htm)では以下のようになっていますので、日本でも同様な投与方法が推奨されています。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)、 治療のための投与:75mg錠 1日2回(計150mg)5日間
なお、日本の2008年Drugs
in Japanによれば、治療には上記量を5日間投与、予防には上記量を7日~10日間投与となっています。
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)、治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)
なお、日本の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間吸入、予防には上記量を10日間吸入となっています。
Q7: 予防投与の場合、予防効果はどの程度持続するのでしょうか?
A7: タミフル、リレンザともに2008年Drugs in
Japanによれば、これらを連続して服用している期間のみ予防効果ありとされています。
Q8: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A8:
予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。
Q9: 抗ウィルス剤を服用しながら授乳することは可能でしょうか?
A9:
母乳自体による新型インフルエンザ感染の可能性は現在のところ知られていません。季節性インフルエンザでは母乳感染は極めてまれです。授乳期に抗ウィルス薬を使用する場合は、担当の医師と相談の上授乳を続けるかどうか決めてください。なお米国疾病予防局の推奨では抗ウィルス剤を服用しながら、赤ちゃんに授乳することは可能であるとされています。同時に赤ちゃんへの感染リスクを最小限にするため頻繁に手洗いしたりマスクをつけるなどの処置を必要とします。
母児分離を行なうべきとの勧告は今のところなされていません。
平成21年5月19日
社団法人 日本産科婦人科学会
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