特発性血小板減少性紫斑病(ITP) |
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、血液中の血小板に対する自己抗体(自分自身の細胞や組織に対する抗体)が産生されて、血小板にこの抗体が付着し脾臓などで破壊されてしまい血液中の血小板が減少してしまう自己免疫疾患です。20〜40歳の女性に多く妊娠に合併することがあります。未治療のまま妊娠すると妊娠中に悪化することがあります。 |
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分類 |
急性特発性血小板減少性紫斑病
原因は、麻疹、風疹、水痘などのウイルス感染により、小児に多くほとんどが6ヶ月以内に自然軽快します。しかし10%前後が慢性化するといわれています。
慢性特発性血小板減少性紫斑病
成人がITPを発症した場合慢性化することが多いです。 |
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診断基準 |
血液検査で、血小板が10000(個/μL)以下で内出血、歯肉出血、鼻血、月経過多などの出血傾向があり、骨髄検査で正常に血小板が造られて他に原因が無い場合ITPを疑います。ITPに特異的でないが血液中の抗血小板抗体(血小板結合性免疫グロブリン PAIgG)を測定する場合も有ります。
1)出血症状は青あざ(紫斑)、点状出血、粘膜出血、歯肉出血、鼻出血、血尿、月経過多など。関節内での出血は通常認めません。
2)血液検査で血小板数が血小板が10000(個/μL)以下で、血小板以外(赤血球・白血球)はすべて正常です。
3)骨髄検査上は正常なことが多いですが、血小板結合性免疫グロブリン(PAIgG)の増加を認めます。
4)ITP以外の血小板を減少させる疾患が無いこと。 |
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妊娠の許可条件 |
★妊娠前の許可条件
1)原則的には、完全に寛解期であることが条件です。(寛解期とは、病気の症状が軽減またはほぼ消失し、臨床的にコントロールされた状態です。)
2)寛解期に達していないが、妊娠希望が強い場合は、ITPの治療を中止しても出血傾向が無く、内科的に血小板数が50000(個/μL)以上を保つ治療が可能な場合許可することがありますが、十分な治療を行ってもほとんどの症例で母体や胎児に危険な状態におちいる可能性があります。(事前に脾臓の摘出術をすすめる場合があります。)
★妊娠中にITPが発症した場合
1)血小板数が50000(個/μL)以下で出血傾向が認められる場合は、妊娠継続は不可能です。
2)血小板数が50000(個/μL)以下で出血傾向が認められない場合は、治療を行いながら妊娠継続は可能ですが、十分な治療を行っても母体や胎児に危険な状態におちいる可能性があります。 |
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妊娠中の管理と治療 |
★妊娠中の管理
1)出血傾向が無く血小板数が50000(個/μL)以上の場合は、無治療で月一度程度の検査を行います。
2)血小板数が50000(個/μL)以下になった場合
→出血傾向が無い場合は、無治療で経過観察します。
→出血傾向が有る場合は、治療を行います。
★妊娠中の治療
1)副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)を、1日量20〜30mg使用し、症状が安定してきたら維持量として1日5〜10mg使用します。
2)出血傾向が強い場合は、(妊娠4〜5ヶ月以降)
→副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)を母体の体重を考慮して増量します。
→γグロブリンの大量療法(5日間)
→血小板輸血
→流産の可能性がありますが、脾臓の摘出術
3)治療の目標は、出血傾向が無くなり、血小板数が50000(個/μL)以上にすることです。 |
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分娩時の管理と治療 |
★分娩時の管理
1)出血傾向が無く血小板数が50000(個/μL)以上の場合は、無治療で経過観察します。
2)血小板数が50000(個/μL)以下になった場合は、治療により血小板の増加を試しみます。
→副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)を、1日量20〜30mgの使用を、予定日の1ヶ月〜2週間前に開始します。
→γグロブリンの大量療法(5日間)を、予定日の1週間前より開始します。
→血小板輸血を、予定日にあわせて用意しておきます。
★分娩方法
1)原則として産科的に問題のない限り、計画出産で経腟分娩を行います。
2)帝王切開術を行う場合は、血小板数を50000(個/μL)以上に維持しておく必要があります。さらに血小板輸血や輸血用血液を用意しておきます。 |
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胎児や新生児への影響 |
胎盤を経由して母体の抗血小板抗体が胎児へ移行して、胎児も血小板減少を起こす可能性があります。出生前診断により胎児の血小板数を測定し血小板数が50000(個/μL)以下ならば、経腟分娩により胎児が頭蓋内出血を起こすという報告もあり帝王切開術を選択する施設もあります。また母体の状態から胎児の血小板数を推測することは、現状ではできません。
無事に出産した60%前後の新生児の血小板は、生後1〜2日目に一時的に減少しますが7日目以降には回復しはじめます。 |