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 血液型不適合妊娠
 「母体と胎児の血液型(ABO型、Rh型)が異なり、しかも母体に有る赤血球抗体(自然抗体)または胎児血が母体に移行して作られる感作抗体が胎児血中に移行して胎児・新生児期に溶血現象が惹起される可能性の有る妊婦をいう。」と定義されています。要するに、お母さんの血液中に胎児の血液に対する不規則抗体が過去の妊娠が原因で既に存在したり、今回の妊娠で新たに作られた場合に、そのお母さんの血液中の抗体が胎児の血液中に移行して胎児の血液(赤血球)を壊してしまう状態をいいます。
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原因  Rh型不適合妊娠とABO型不適合妊娠さらに不規則抗体が有ります。
Rh型不適合妊娠は母体の血液型がRh(-)で、胎児がRh(+)の時に起こります。
ABO型不適合妊娠は母体がO型で胎児がA型またはB型で起こります。
不規則抗体とは、過去に流産・死産・子宮外妊娠・正常妊娠(妊娠中に何らかの原因で胎児血液が母体血液中へ入ってしまう事もあります)・人工妊娠中絶術・切迫早産など、妊娠に係わる出血を伴う症状で母体血液は胎児血液に感作される事があります。
★Rh型不適合妊娠
Rh型の抗原は5種類知られていますが、その中でも一番強力なD型抗原が問題になります。このD型抗原に対する抗体が母体血液中に存在すると、胎盤を経由して胎児へ移行し胎児の血液(赤血球)を壊して胎児貧血を起こします。その結果胎児全身浮腫や新生児黄疸、新生児貧血になってしまいます。産まれた赤ちゃんの血液型がRh(+)の時に分娩後72時間以内に「抗D免疫グロブリン」を母体に投与する事で、分娩が原因で母体に抗体産生することを予防します。

★ABO型不適合妊娠
こちらは、Rh型不適合妊娠と異なり、発現の仕方に不明な点が多々あり予防法もありません。しかし、胎児期に異常を起こす事は有りませんが、新生児期に重症黄疸になることがあります。

★不規則抗体
一般に知られている血液型はABO型とRh型だと思います。しかしその他にも30種類以上血液型があります。不規則抗体とは、ABO型以外の血液型に対する抗体が血液中に存在する場合をいいます。妊娠中はこの不規則抗体が大きくかかわってきます。母親が持っていない血液型を父親が有し、胎児が父親から遺伝された血液型で何らかの原因で母体がその血液型によって感作された場合に抗体を産生します。その産生された抗体は母体から胎盤を通過して胎児へ移行し、胎児の血球と反応を起こして血球を破壊することがあります。これを新生児溶血性疾患(HDN)と言います。
日常診療中もっとも遭遇するものはRh血液型不適合妊娠(抗D抗体)で胎児や新生児に重篤な溶血性疾患をおこします。ABO血液型不適合妊娠では胎児や新生児に重篤な症状をおこすことはまれです。

頻度
女性の検出率は男性の約2倍の頻度です。妊娠初期の妊婦さんは、初産の方で約0.3%、経産婦さんでは約10倍以上の3.75%であるという報告も有ります。これは初産に比べて経産婦さんでは血液不適合妊娠による胎児や新生児の溶血性疾患のリスクが高いことを意味しています。
  不規則抗体の種類と新生児溶血性疾患の重症度

血液型

抗体

溶血性疾患重症度

血液型

抗体

溶血性疾患重症度

Rh

D

軽症~重症,水腫型

Duffy

Fya

軽症~重症水腫型

C

軽症~重症

Fyb

なし

E

軽症~重症 水腫型

Kidd

Jka

軽症~重症

c

軽症~重症 水腫型

Jkb

軽症

e

軽症~中等症

Diego

Dia

軽症~中等症

Rhnull

Rh29

軽症

Dib

軽症~重症

MNSs

M

軽症~重症 水腫型

Lutheran

Lua

軽症

N

軽症~中等症 重症

Lub

軽症

S

軽症~中等症

Kell

K

軽症~重症水腫型

s

軽症~重症

k

軽症

P

P

軽症~重症

Ko

軽症

PP1Pk

軽症~重症

Ku

軽症~中等症

Lewis

Lea

なし

Jsa

軽症~中等症

Leb

なし

Jsb

軽症

Xg

Xga

軽症

Jr

Jra

ごく軽症

青文字は、日本人に発症した報告が有りません。  水腫型重症は、ごくまれな場合です。

   
検査  ★間接クームス試験
母体血液中の抗D抗体(不規則抗体)の有無を調べる検査です。妊娠初期、中期、後期と頻回に調べる必要があります。検査結果が32~128倍であると胎児水腫や胎児死亡の危険性が増すといわれています。

★羊水検査
羊水中のビリルビンなどの胎児由来物質を調べますが、羊水穿刺に伴う胎児への危険性と繰り返し羊水を吸引検査するために羊水量の減少さらに検査中に母体が胎児由来の細胞に感作されて憎悪する可能性などがあります。

★胎児採血
超音波診断装置を用いながら臍帯(へその緒)から胎児の血液を直接採血して検査する方法です。安全性から羊水穿刺に比べてリスクは高いが、検査結果の確実性と治療面から従来の管理法よりも優れているため胎児の状況によって実施されるようになってきました。

★超音波診断
Rh型不適合妊娠で起きる胎児貧血が増悪すると、胎児は腹水貯留→皮下浮腫→胎盤の肥厚→心嚢液貯留と症状が変化します。
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妊娠中の管理  ★問診 
①過去の妊娠と胎児や赤ちゃんの状態
②父親の血液型
③今回の妊娠週数
④母体血液中の抗D抗体(不規則抗体)の有無
⑤子宮筋腫や卵巣のう腫などの婦人科系合併症や全身疾患の有無
⑥過去の妊娠時の「抗D免疫グロブリン」の投与の有無

★検査と治療
①母体血中の抗D抗体(不規則抗体)に関するスクリーニング検査で種類の確定
②母体の間接クームス試験によって抗体価を調べる
③超音波診断装置によって胎児の状態を把握する
④胎児血を採取して貧血の有無や直接クームス試験で胎児血液中の抗体価を調べる
⑤正常値より2g/㎗以上少ない胎児貧血を確認した場合は、胎児輸血を考慮する。胎児輸血方法は臍帯輸血と胎児腹腔内輸血があり、胎児や胎盤の位置、羊水の量などを考慮した上で安全かつ効果的な方法を選択します。
⑥妊娠34週以降で胎児の肺の成熟が確認されれば早期分娩させ治療します。
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予防  基本的には母体の血液型がRh型マイナス、胎児がRh型プラスで母体血液検査で間接クームス陰性の場合に分娩後72時間以内に抗D免疫グロブリン250μgを筋肉内注射して、母体が感作されることを予防します。しかし既に感作されている場合は無効です。
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